サッカーを楽しみ、サッカーから学ぼう!

― 29期生の卒部に当たって ―

総監督 大津 保男

【おめでとうの代わりに】

 BJ29期生の皆さん、とうとう本当に卒部の時を迎えてしまいましたね。正直言って、私は今、君たちにあと少なくとも半年位は、小学生という時間と活躍のチャンスを与えてあげたかったと思っています。

お父さん・お母さん方の気持ちを察するに、高学年となりオレンジ色のマイユニフォームを作成した辺りから、君たちには大いに奮起して『優勝』などのタイトルをもっともっと獲って欲しかったと思っていたはずですし、君たちも少なからずそのことを感じ取っていたはずだからです。

【最初にお詫び】

学年ごとの部員数に大きな波がある(あった)ことから、君たちには(もちろん引率の父母の皆さんも含めて)色々な面で負担や迷惑をかけたのではないかと申し訳なく思っています。つまり、試合では人数の少ない1学年・2学年上のメンバーのサポートあるいは実質的な主力メンバーとして、体力・技術とも上の相手に立ち向かうことが多く、もしかしたらそのことが原因で、負けることや大量失点に対する「鈍感力(?)」がついてしまったのではないかと思うからです。

一般的に、我が子を思う親の立場から考えれば、自分たちの学年の中で切磋琢磨しながら、一緒に卒業を迎えるということを期待するものです。しかしながら、毎年度安定的な人数が各学年に揃っていない限り、小学校6年間の中で、親御さんの期待する「単独学年」での「サッカーチームづくり」を実現するのは難しいものがあり、クラブ全体の運営という視点で見た場合には、どこかに少なからずしわ寄せがきてしまうものなのです。

小学校も後半の年代になると、一人ひとりの技術や体力が伸び始め、適度な競争心が芽生え、さらにチームワークの重要性も意識し始めるなど、サッカーらしいプレーが随所に見られるようになります。人数的に恵まれている29期生ながらも、本来取り組めるはずのU10からU12の時期に、「自分たちのチームづくり」に力を注ぐことが思うに任せなかった。そんなハンデを取り戻すには、遅くとも5年生から最上級生の6年生が終わるまでの2年間位は、故障その他もなく全員揃った状態で活動できる時間が、もう少し必要だったのではないだろうかと思うのです。

【29期生の誕生を振り返って】

 思い起こすに、直近の上級生の1・2年がほとんどいない状況で、幼稚園児の田中凱庸君(よしのぶ)がクラブに入ってきたのが2000年(平成12年)の春でした。お父さん譲りのパワーとテクニックと負けん気で頑張り続け、21世紀の2001年(平成13年)に入り、このままずっと一人かと思われた1年生の6月になって、同じ妻田小学校の仲間の近藤颯平君(そうへい)、山口大貴君(ひろき)、高橋拳伍君(けんご)が加わり「仲良し1年生4人組」がここに誕生しました。

 さらに秋になってからは、川井亮佑君(りょうすけ)、平野誉大君(たかひろ)、続いて島崎聖那君(せな)、小室俊貴君(としき)と順調にメンバーを増やし、全員妻田小のメンバーで固め、一挙に8人に倍増となりました。

お父さんの海外勤務の関係で、「よしのぶ」がその後クラブを離れることとなったものの、2年生となった年は、ちょうど日韓共同開催のワールドカップイヤー。そんなことも幸いしてか、2002年(平成14年)には、ホームグラウンドの厚木小からも、山田湧大君(ゆうた)と山田翔大君(しょうた)の双子兄弟、明石匠平君(しょうへい)、浜村夏輝君(なつき)の4人が加わり、11人体制で1チームができるようになったのです。

やんちゃ坊主の3年生となった2003年(平成15年)の7月時点では、厚木第二小からの北山勇也君(ゆうや)をはじめとして、妻田小・厚木小それぞれから、池田有輝君(ゆうき)、宮崎康太君(こうた)、石山貴之君(たかゆき)、三岡和樹君(かずき)、根本佳君(けい)が新たにメンバーとなり、さらに11月には塚口裕太君(ゆうた)ということで、理想的な18人体制が誕生しました。

 続いて4年生の2004年(平成16年)11月には大型の石原拓人君(たくと)、年を越して高山元吉君(げんきち)と少しずつメンバーが加わる一方、山田兄弟など親御さんの転勤その他の事情で離れた者もおり、5年生の秋以降は、今回卒部する14人が最後まで頑張り、晴れて29期生としてBJの歴史に名前を残すことになったのです。

 

以上のように、たった一人の幼稚園生から、今回29期生14人を送り出すきっかけとなった「よしのぶ」は、みんなの記憶にもあると思いますが、4年生の夏に一時帰国した時には、市内大会の会場に駆けつけて一緒にプレーをし、大いに活躍してくれました。そして、6年生の時の一時帰国では、一回りも二回りも大きく逞しくなり、2泊3日の山中湖夏合宿に参加して、みんなとの旧交を温めてくれました。

また、兵庫県に行った山田兄弟も、交流行事など機会あるたびにグラウンドに顔を出してくれました。29期生としての卒部証書は渡せないものの、このようにいつまでも仲間意識を忘れずにいてくれる友達を、これからも大切にして欲しいと思います。

【心強いサポーター】

君たちを支え続けてきた心強いサポーターである、お父さん、お母さん、あるいは兄弟姉妹などの存在は非常に大きく、卒部を機会に、改めて心から感謝をしてもらいたいと思っています。理解あるこれらサポーターの皆さんは、クラブの運営面・指導面でもその団結力を大いに発揮し、君たち以上に率先して、色々と工夫を重ね、活発に行動するなど、子供の活動を通じて「親と子が共に育つ」という、私が望んでいるポリシーの一つを、見事に実践して見せてくれました。

映像機器を駆使しての親子ルール勉強会、リフティングなどの自主練習に向けての工夫、合宿等での大型スクリーンによるビデオ反省会、DVDでの映像記録、学年ブログによる情報発信、多くの父兄コーチによる日頃の指導、コーチ会と称した度々のコミュニケーション、卒部旅行としてのスキー・スノボツアーなど、上げればきりがありません。また、役員としての日頃の活動や交流行事の運営の中でも、お母さん方の細かい気配りと手際の良い準備、周囲の冷たい視線に臆することのないチアリーディング、親子対抗などでの年齢を感じさせない頑張りなど、私としても感謝にたえません。

【思い出は色々あるけれども】

これまでのBJでの活動を通じて、私は、29期生の誕生から今日まで続けて、君たちの成長ぶりを割合近くで目にすることができました。これは貴重な経験であり大きな財産でもあります。入部の頃から現在まで撮ってきた沢山の写真を眺めていると、その当時のことが色々と思い出されます。顔つきの変化や身体の成長はもちろんですが、性格や考え方、そしてサッカーに対する姿勢なども、ほとんど変わっていなかったり、あるいは別人のように大きく成長(変化)したりと、やはり人それぞれなのだなということが感じられます。

それでも敢えて29期生全体を一言で表現するならば、『どこか遊牧民的で臍を持たない仲良し集団』というところでしょうか。一人ひとりはそれ相応の意識があるものの、群れてしまうとどちらに向かっているのか良く分からない。みんなそこそこの野心はあるものの、ライバルを蹴落として先頭にのし上がったり、リーダーシップを全面に出して服従団結させるほどのボス魂も強くない。そんなふうな、のどかな優しい学年だと思います。

【本当に知りたいことは】

間もなく中学生となり、様々な新しい生活に入るわけですが、これからの環境の中で君たちがどのように大きく変化し成長していくのか、私が本当に知りたいのはそこのところです。

良いこと・悪いことを問わず、学校や家庭で先生や両親から、そして練習や試合などでも私や各コーチから、おそらく何十回、何百回となく言われてきたことがあると思います。これらが単に頭の中での理解ではなく、本当に肌身に染みて分かってくるのはこれからだと確信しています。

その時に、どのような方向に自分を変えて行くのかが、本当に知りたいところなのです。

【サッカーを楽しむこととは】

これまでにも繰り返し言ってきたかも知れませんが、私は、小学生年代のサッカーは、辛いことや苦しいことばかりであってはいけないと考えています。本当に好きになり「楽しむ」ことが必要です。でも、真に「楽しむ」ということは、とても難しいことです。勘違いしないで欲しいのですが、手を抜いていい加減にやることでも、ダラダラ遊びながらやることでもありません。一つのプレーが思うようにできるようになることでの「楽しさ」、仲間と気持ちがぴったりと合い、連携した良いプレーができ、得点につながったり、勝利したりすることでの「楽しさ」、1対1での相手との駆け引きや相手チームとの駆け引きの中で優位に立った時の「楽しさ」、力を出し切って心底疲れ切った時の満足感からくる「楽しさ」、その他にも色々な、その人なりの「楽しさ」が見つけられるはずです。

【サッカーから学ぼう】

そして、もし残念ながらその「楽しさ」が十分味わえていないというならば、これからの生活の中で是非とも見つけ出してください。もちろんサッカーを通じてというのが理想ですが、他のスポーツでも結構ですし、学問や芸術、社会活動など何でも構いません。

極めて大げさに言えば、ピッチ上でのサッカーには、人間社会という集団生活で起こる様々な『人生の縮図』が展開されていると言ってもよいかも知れません。

目の前に転がってきたボールをただ蹴り返すのもサッカーと言えなくはありませんが、やはり「意図のある」プレーをすることが大切です。戦いに敗れた悔しさをバネに、不断の努力で個の力をつけ、互いにカバーし合うなどチームワークで個の力を何倍にも高めるとともに、五感を研ぎ澄ませて自分自身での状況判断をし、目標のゴールを目指すのです。ボールを奪われたら取り返そうと思う気持ち、先取点を奪われても決して諦めないこと、例え攻勢であっても一瞬の隙をついたカウンター攻撃があり得ることから、決して油断をしないことなど、サッカーから多くを学んでください。

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君たち一人ひとりへのアドバイスや贈る言葉があります。

でも敢えてここには記しません。なぜなら、私の心の奥底にいる君たちは、まだ全員がBJのメンバーだからです。(とは言え、一応、卒部証書は渡します。)

30周年の節目となる2007年度の行事や、その後の折々の機会に、君たちの成長ぶりや近況報告を是非とも楽しみに待ちたいものです。

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BJ29期生として卒部する君たち14人が、今日まで頑張ってきてくれたことに感謝し、それぞれの道で大ブレイクすることを夢見て、「乾杯!!」